Rugir Pickups’s blog

手巻きピックアップビルダーの制作解説などギター関連ブログ

ビンテージPUの再現 Rugir Pickups

いろいろなメーカーから、ビンテージPAFの再現モデルや50年代ストラトキャスターの音 などを謳ったピックアップが出ています。

ビンテージの音は、

・その時のスペック(使用材質、巻き数、抵抗値)

・経年による劣化

・個々の偏り(例えば巻く人の)

・搭載されているギター

・アンプ

・弾く人の個性

で構成されていると思います。ですので、同じ「61年モデル」のオーダーがあっても、注文される方はどのような音を望んでいるか、差が出てきます。

ある人は太い音、ある人は枯れた音・・・。先だっての65年製ピックアップの計測から、経年劣化が音が太くなる方向に働く場合と、細くなる方向と2つありそうなことが分かりました。65年製は抵抗値が少し増え、同時にインダクタンスも増えて、キャパシタンスも増加していました。それで合わせてリアを巻くときには、インダクタンス値を揃えつつ、キャパシタンスがなるべく大きくなるような巻き方で、フロント・ミドルの65年製に寄せるようにしました。

逆にMik Oldfieldは、枯れた音と太めの音が同居している感じであったので、磁石のトップの削りと磁石の減磁、キャパシタンスで調整した上でリード線も変えています。

どちらも正解であり、カスタムオーダーにお応えするには、よくご要望をお聞きする必要があります。

また、ご回答頂いたご要望とお望みの音が違うということも割とあります。それは個人によって同じ音を聞いても感じ方が違うからです。そこまで想像しながら、ご要望にあったレシピをご提案することになります。最近は投稿した動画が100本を超えて、ご要望に近いものを選んで聞いて頂いて、それと比較することでお互いのイメージを擦り合わせることが楽になりました。

ビンテージと抵抗値を揃えると、出音はかなり変わる可能性があります。オリジナルが機械巻きのギブソンに対して、手巻きで再現する場合、それからオリジナルが手巻きで機械巻きで再現する場合、同じ抵抗値でもインダクタンスはかなり違っている可能性が高いです。例えばギブソンPAFハムバッカーの場合、オリジナルは4.5H/8.5KΩ/150pFくらいです。これを当方で手巻きすると、5H/8.5K/80pFくらいになります。

磁石も当時のアルニコと今のアルニコでは製法が異なり、今のものの方が磁力が高いです(磁石の歴史は磁力アップの工夫の歴史です)。「ラフキャスト」といっても単に鋳型から抜いたままで表面切削加工をしていないだけで、当時の磁石を再現することは、製作方法を同じにしない限り困難です。

ですので、カスタムオーダーで、インダクタンスと抵抗値を指定されてしまうと、1種類のワイヤーでは制作できないので2種類のワイヤーを途中で繋いで作ることになります。3次元連立方程式を解く感じでレシピを作り、一発勝負で巻いていきます。

そういう訳で、PAF系を作る時は、抵抗値は管理せず也で、インダクタンスで管理しつつ、好みの音の傾向に合わせた巻き方をし、使用するリード線の選択なども加えて出音を寄せるように工夫しています。