Rugir Pickups’s blog

手巻きピックアップビルダーの制作解説などギター関連ブログ

ナット調整 Rugir Pickups

出荷時の弦高は少し高めに設定してあります。

これは人により好みがあることと、ぎりぎりまでナット溝を削ると失敗する時があるからです。

またナット溝の幅により、適した弦のサイズも決まってきます。

PRSは弦サイズ指定していますね。現行は10-46、以前は09-42だったかと。

ナット溝が弦よりかなり太いと、溝の中で弦が余計な振動をして、出音がバズったり、綺麗に伸びなかったりします。適切なナット溝は、弦に対して少しだけ幅が広く、ペグポストに向けてR状に傾斜している必要があります。それで弦とはブリッジ側端(下端)で主に接して、荷重の多くをその点で受けているのが理想です。

R状にしたいのは、直線状だと、ナット幅の上端・下端の2点で主に接し、場合によっては上端で荷重を受けてしまって音がずれたり伸びなかったりするためです。

うまくR状にできないときは割り切って下端のみで接するように削ってしまった方がましになります。

溝高さが弦高を決定し、ローフレットでのセーハー(つまりFですね)の押さえやすさに直結します。12フレットよりハイポジでの弦高をギター販売で載せているのは、あくまでネックがストレートであることと、ネックの仕込み角度が適切でサドルでの調整代があることを示す指標で弾きやすさとは必ずしも一致しません。

ざっくり言えば、ナット溝高さが低いほうがFが押さえやすく弾きやすくなります。

但し削りすぎると弦と接してしまい使えなくなってしまいます。何度削りすぎでやり直したことか・・・。

削りすぎで一番多いのは、弦より若干きつい幅で削り、溝底まで弦が入っていない状態でペグを巻いたら、「キンッ」という音とともに弦が沈んでフレットと接触するケース。最初からやり直しです。ですので、弦幅よりちょっとだけ幅広く削り、最後の溝床のR断面だけ、弦幅ちょうどすれすれに削るようにしています。しかしフレットフォイルの幅がちょうどよいのがない時が多いので、最後のところの削り方にはノウハウがあります。1,2弦が一番難しいですね。

きれいに削れると、音の伸びとクリアさが違います。

ついでに、ナットのスキャロップ加工ってご存じですか?

弦溝と弦溝の間に削って山山にするものです。こうすると隣接する弦の振動が隣の弦に伝わりにくくなるので、音の分離感(まざり)が良くなります。

しかし削りすぎると格好が悪くなってしまいますね。やる時は軽くR状に彫り込むくらいにしています。ギターの音は棹(ネック)が8割。あとはボディーの振動が間接的にPUそのものを揺らすことで音に影響が出ます。メイプルとローズ指板の音の違いは固有周期の違い(硬さに依存し硬いほうが周波数が高くなる)によります。ボディーも同様。レスポールやPRSは表が硬いメープル、その下が柔らかいマホガニーで音のバランスを取っています。