ピックアップのポッティングは、ワイヤーをワックスで固定して、余計なマイクロフォニック効果を抑制する目的で行われています。
ワックスで行う方法が一番ポピュラーですが、ラッカー含浸やそれ以外の材料での含浸も行われています。
重要なのは、メディアがワイヤーの被覆を侵食しないことと、流動性です。ワイヤーの隙間を通って浸透するためにはメディアが十分柔らかく浸透しやすい必要があります。
浸透させるために、真空状態にしてワイヤーの隙間にある空気を抜いて、ワックスなどがその隙間に浸透するようにします。
この写真はフェンダーのカスタムショップのビデオのもので、大き目の容器にワックスが溶けた状態で入っており、蓋をしたあとに真空ポンプで空気を抜いてワックスを含浸させています。
こちらはダンカンの通常製造ラインのポッティング機械です。数十個を一度にポッティングする真空引き装置です。
真空状態を作るためには蓋のフランジ部分の気密性担保が重要です。
ルジールピックアップスで使用しているのは、30Barまで引ける、小さい真空ポンプと容器で、ガラス窓からに内部が覗けるので、見ながら調整をしています。
ワックスポットに使用されるのは、パラフィン(工業的に製造された蝋)、蜜蝋(ミツバチの巣から採れた天然もの)で、パラフィンの方が安いので大量生産品はほぼパラフィンでポットされていると思います。蜜蝋の利点は、融点が低いので、ボビンの熱変形が起きにくいことでしょうか。流動性は大差ないように思います。
ルジールピックアップスでは、蜜蝋100%を使用していますが、パラフィンを混ぜても差はほとんどないと思います。
ラッカーポッティングは含浸しにくいのと有機溶剤は扱いにくい面があるので、当方では使用していません。代わりに、絶縁ニス、またはセラックニスを使用しています。
絶縁ニスは少量の入手が難しい(オヤイデで売っています)のと、硬さを調整するシンナー(thinner - 薄めるものの意)の入手が難しいので、ほぼ使用していません。代わりにセラックニスを使用しています。
ポッティングの深さは、残響をどれくらい出したいかにより、オーダー毎に変えています。深くすればするほど、マイクロフォニック効果によるハウリングを抑制することができます。従いメタルなどハードな音楽を演奏される方向けのPUは、ワックスポットで、更に真空引きをしています。
逆に歪ませない方の場合は、ポッティングを浅くしています。
深い方から順に並べると次のようになります。
ワックス+真空引き
ワックス
セラック+真空引き
セラック
ノーポット
丁度制作したワイドレンジは、リッチな音を出しつつそれなりにハウリングを抑えるため、セラック含浸浅め というレシピにしています。
GreatVintageは、ノーポット。ArqueNoteはセラック含浸(普通)です。
出力・巻きテンション・巻き方・巻き形状・ワイヤー種・ポッティング を調整することで、ご要望の出音に寄せて行きます。